ハーツクライ(有馬記念)

あれは、行き脚がつかなかったのでしょうか。それとも騎手がわざと後方に下げたのでしょうか。


まずは勝ち馬の紹介を。


ハーツクライ (Mahmoud/Hyperionちゃん)
牡4 2001/4/15生 父サンデーサイレンス 母アイリッシュダンス
牝系 F.No.〔6-a〕 ビューパーダンス(1983・米)来日より3世代目


僕はパドックでの馬の見極め方というものには全く自信がありませんが、有馬記念のパドック中継を見ていて、ディープインパクトの様子が悪い方にいつもと違うというのはなんとなくわかりました。自身の体調がいまひとつだったのかもしれませんが、なんとなく、周りの馬の中に嫌な馬がいるようなそぶり(をしたように思っただけですが。。。)で、「走りたくてうずうずしている」とは違う落ち着きのなさ。古馬が相手で、群れの中で唯一の「坊や」になっていて、今までにないストレスを感じているのかなと思いました。


競走馬・ディープインパクトの欠点としては、スタートの拙さが挙げられると思います。前走・菊花賞では逆に上手くスタートを決めすぎて、序盤の折り合いを欠くことになりましたが、ともかく普通にゲートを出て、好位で折り合うということができたことがありません。
一方、今回の舞台・中山芝2500mコースは始終コーナーを回り続けるコースで、逃げ馬が無謀なペースで走らなければ、ひとたび馬群の隊列が決まると最終コーナーまであまり順位が入れかわらないという印象があります。1周目のスタンド前までに楽に前目のポジションを奪えれば、後方の馬とさほど体力のロスは変わらずにレースを進めることができて、序盤のリードの価値が比較的大きいコースだと思います。
過去の有馬記念の例でいえば、去年の1・2着馬のゼンノロブロイタップダンスシチーはごく序盤から先手をとって、そのまま後続を引き離してゴールしましたし、コイントスアメリカンボストゥザヴィクトリーらは先行からの流れ込みで穴をあけました。


レース検討の際、コースへの向き・不向きという点ではディープインパクトにはこのコースは不向きだと思っていました。ですが、前走菊花賞ではゲートの出が良かったですし、池江調教師が好位からの競馬に考えていたようだったので、そう悲観的には見ていませんでした。
そして迎えた、レース本番ですが、、、あれは、行き脚がつかなかったのでしょうか。それとも騎手がわざと後方に下げたのでしょうか。まずまずの形でゲートを出ていたのに、ディープインパクトはすぐに後方へ。いつもの綺麗なフォームとは違って、力んだような走りで最後方から外目を徐々に進出し、直線手前で大外から先団へ。そこからも伸びてはいるのですが勝ち馬に半馬身届かずの2着。通ってきた場所を考えると勝ち馬と比べて距離のロスもかなり大きかったと思います。
ディープインパクトの走り(フォーム)が連勝時とは別馬のようだったので、おそらく馬が本調子にはなかったのでしょうが、着差を考えれば敗因は鞍上の騎乗ミスによる所が大きいと思います。ライブで見ていた時は、道中、もっと大差で敗れるような予感がしていました。あれで勝ち負けまで持ってくるというのは、やはり並みの馬ではないと驚きました。
今回の敗戦でディープインパクトの評価を下げるのは妥当でないと思いますが、作戦次第では勝てたレースだったという意味では、痛恨の一敗だったかもしれません。


一方で勝ち馬のハーツクライは、鞍上・ルメール騎手の策が功を奏して今までにない味を出して結果を出しました。最後方待機から直線一気という策がこれまでのこの馬の主な戦法で、直線の短い中山コースでは良績がありませんでしたが、序盤から好位にとりつくという有馬記念の好走パターン通りの競馬で十二分に能力を発揮し、GIタイトル奪取に成功しました。
先述のパドック中継で、良く見えたのがリンカーンとヘヴンリーロマンスとこの馬でした(フジテレビ中継で絶賛されていたデルタブルースは、逆に立派すぎるように見えて、好印象ではありませんでした)。ただ、牝馬のヘヴンリーロマンスは能力的に一枚落ちると評価していて、リンカーンとハーツクライは鞍上(横山典騎手とルメール騎手)がGIで2着が多い騎手なので、3頭ともアタマから買うのはどうかと思ってしまって、馬券を獲り逃がしたわけですが。。。(おまけに、リンカーンはともかく、ハーツクライは中山不向きとみて評価を下げていました)


3着に入ったリンカーンはコースの相性もよく、直線の不利がなければ2着もあった好内容。一方4着のコスモバルクは、道中折り合いがついていたように見えて精神面の成長も若干あったのかもしれませんが、中山芝2500mのコース特性に助けられた4着のように思えるので、この結果にはあまり高い評価ができません。引退レースで大敗してしまったゼンノロブロイタップダンスシチーに関しては、直近のレース内容と、今回の体調面を併せて考えれば、まあ相応な結果だったと思います。