"スターシステム"

エリザベス女王杯
「ずいぶんと四位騎手が手綱を引っ張ったけど、そんなにひどかったか?」
審議の結果を待ちながらそんな風に思っていたのですが、ヤマニンシュクルは引退を余儀なくされるほどのケガだったそうで。。。


珍しくすんなりと買い目を決めることができたほど自信があったのですが、「よもや」という事態はそういうときに限って起こったりするものですね。
直線を向いて、それまでレースを引っ張っていたシェルズレイが失速し、外から抜け出しにかかったいたアサヒライジングがやや内へコースを変えました。
この馬と、シェルズレイに替わって内から先頭を窺っていたディアデラノビアとの間のスペースが狭くなったその時、そのコースを狙っていた後方の3頭ほどのうちで一番アウトコースにいたカワカミプリンセスが切り込んできて、馬群を切り裂くように突き抜けてゆきました。
カワカミプリンセスの「強さ」を感じたレース振りだったのですが、「決め手の使い出し」のところでヤマニンシュクルの前をふさいでぶつかり、多大な被害を与えたということで12着降着に。
うまく騎手と折り合って末脚を活かし、きっちりと能力を出したフサイチパンドラが繰り上がりで優勝。外・外と回して届かず3着入線→2着繰り上がりだったスイープトウショウはやはり上がり目がなかったか。
世代最強牝馬の連勝記録はこんなかたちでストップ。


中継を見ていた印象では、複数の馬の動きの流れの中でヤマニンシュクルに不利な局面ができてしまったように見えたので、カワカミプリンセスはお咎めなしかなと思っていたのですが、裁定はアサヒライジングの動きと斜行との因果関係はないと判断したのでしょうね。
運・不運もあるのでしょうが(ヤマニンシュクルがケガしていなかったらどうだったでしょう?)、本田騎手のミスはあったと思うので、残念は残念だけれども仕方がないところか。
でも残念。連勝中の馬が1着入線でね。。。とても残念。予想バッチリだったのに。。。


GIでの1着降着ということでメジロマックイーン秋の天皇賞(1991年)が話題に上っていましたが、その時一番不利を受けたプレジデントシチーに乗っていたのが本田騎手。
よく覚えていますよ。なんていったって「メジロマックイーンプレクラスニー」を持ってましたから。
エリザベス女王杯ではヒシアマゾンの2着入線→7着降着(1996年)というのもありましたが、この時はダンスパートナー(1着)とヒシアマゾンの1点勝負でした。
降着で当たり馬券をフイにしたことは何度もあるのに、繰り上がりで的中したことは、、、確か1回ぐらいなはず。うーむ。。。


話題を少し元に戻して。
ルールにのっとって粛々と裁定を下すことには異論ありませんが、こういう後味の悪さっていうのはなんとも言えませんね。
カワカミプリンセスの「強さ」というものを確かに感じつつも、それに紐で結ばれてしまった罪と罰。そしてさらに結わえ付けられようとしている悪意。
ヤマニンシュクルの引退はとても残念で、気の毒に思いますが、それにしてもこちらの記事の書き方にはイヤな匂いを感じます。(燃え尽きた…本田騎手が年内引退へ:デイリースポーツ)
本田騎手が調教師試験を受験していることを知っているはずだろうに、このタイミングでこの書き方。
かつてサッカーの日本代表を指揮していたトルシエ監督が、特定の選手を過剰に喧伝し、選手に過剰な期待を負わせた挙句、結果が思わしくないと過剰に非難するマスコミ報道に対し、「スターシステム」と皮肉っていましたが、そういう匂いがここにあります。


同じ地点から同時にスタートして同じゴールを目指す競馬という競技は、ある意味サッカーよりもずっと「スターシステム」がふさわしくない興行だと思うのですが、実際はここ何年もの間、幾度となく「スターホースの不在」というテーマで語られてきました。
そしてついに1頭のスターホースが現れて、「スターシステム」が発動された結果、現在、その馬がどうなっているのか。
今週、ディープインパクト凱旋門賞出走時における薬品使用ルール違反についての制裁がフランスギャロから発表され、JRA側も記者会見が行われました。


これで決着、なのか???
事実に関する説明があり、今まで知らされなかったことが明らかにされました。
揮発しにくい薬品が馬房内に飛散した。1週間投薬しなければ体内には残っていないはずの薬が、馬房の寝ワラに染み込んでいた。調教師はそういった事故があって使った薬品が禁止薬物にあたることを知らず、事故現場にいた人間も、薬を処方したフランスの獣医師も、ディープインパクトが失格になるおそれがあるということに気づかずにレースを迎えた。。。
なぜ、こんなことに???
たかだか喘息の薬程度のもので、なぜ、こんなことに???


しかしもっと残念で、腹立たしいことは、「起こってしまった事故に対する管理・処置のミス」に対する処分であるということを無視するかのように、
「G1通算5勝のディープインパクトが生涯に誇るはずだった競走成績の一部に、禁止薬物使用による「失格」という不名誉な記録が付け加えられることになった。」などと書きたてる者がいること。(ここはその前に「当代一の人気馬が薬物で汚染されていた。」、「「天駆ける走り」が薬の影響だったのではないかとの疑問符を残したままの引退では寂しすぎる。」などと書いている)
そして、明らかに間違った方向の批判も正そうともせず、当事者の醜聞を放置し、さらにマスコミを煽るかのように「汚点」などと発言し、そして今首をすくめてやりすごそうとしているJRA


残念に・気の毒に思うことと、誰かを非難することは別の次元の問題なのです。