あの武豊、さえも

マイルチャンピオンシップ当日、ものすごく久々に後楽園のウインズに行ってきました。駅前のパチンコ屋がカフェになっている、とか、無線LANコーナーができている、とかあちこちが変わっていたのを見つけたのですが、一番の発見は、すっかりPATに慣れてしまった自分にとってウインズはとても遊びにくい、ということ。
東京のメインレースのオッズ専用のモニターを探し回ったり、結局みつからずオッズプリンターで出力したら用紙が大きすぎてむやみに場所をとってしまったり、行動がいちいち垢抜けない感じ。ことギャンブルの場でそういう気がすると、なんとなく周りからアヤをつけられている感じがして、いい気分はしないものです。PATに加入する前はこちらにもしょっちゅう来ていたし、こんな気分にはならなかったのですがね。。。


マイルCS、騎手コメント「本当に強いね」 : netkeiba.com
来週も満足のいく騎乗を : 武豊オフィシャル,日記11月19日分


さて、マイルチャンピオンシップ。レースはダイワメジャーの完勝でした。
雨は結構な量降っていたようですが、馬場が軽い・硬いのは相変わらずで、芝がすべったりして追い込みが利きにくくなっている分、余計に先行馬有利な印象。
ダイワメジャーに勝ってくださいと言っているような好条件が揃い、鞍上・安藤勝己騎手も「余計な不利さえなければ」という自信の騎乗のように見えました。
いつでも前をゆくステキシンスケクンをかわせる位置で後続を待ち、なるべく併せ馬の形を保って馬の集中を切らさない。ダンスインザムードが迫ってきても余裕たっぷりで、どこまで行っても着が入れ替わらない雰囲気でした。
レース展開もだいたい予想通りで、馬券も久々の本線での的中。


レース後のインタビューの口ぶりでは、安藤勝己騎手は、ダイワメジャーの「早めに先頭に立つとソラをつかう」悪癖は直りきってはいないと思っているように聞こえましたが、ここ3戦癖を完全に封じ込められているのですから相当に手があっているのでしょう。


一方の負けた馬たちについて。
南半球産で成長途上、かつ中1週での参戦だった3歳馬・キンシャサノキセキは前にもつけられる新味を見せて好走していましたが、現状ではこれが精一杯かなと。来年に期待したいところ。
コートマスターピースはスタートからスピードに乗れず(わざと?)、後方馬群の中の普通なら絶望的なポジション。いつの間にかゴール前では7番手まで押し上げていたが勝ち負けには絡めず。雨を気にしすぎたのかも。


好位追走組の馬が上位を独占する中、ダンスインザムードは唯一中団から良い伸び脚を見せていました。雨の中、なかなかラップが落ちてこない流れで後ろから伸びてくるところは「さすがは武豊」という感じがしましたが、先頭のダイワメジャーに並びかけたところでお終いになってしまうところでは、逆に武豊騎手の弱い部分が出たように思えました。
「追える」「追えない」というのは定義がはっきりしないので使うのに躊躇してしまいますが、ゴール前でもうひと伸びさせる、あるいはもう少しだけ我慢させる、という技術の面では武豊騎手は弱いな、と感じることがあります。特にデットーリ騎手など外国人騎手や、安藤勝己騎手ら地方競馬出身騎手と比べた時に。
マイルチャンピオンシップで言うと、今回で2着が4回目(未勝利)というのが話題になっていましたが、
  (1)89年バンブーメモリー・・・オグリキャップとの長い叩き合いの末、ゴール前で首を伸ばした相手にハナ差競り負ける。
  (2)90年バンブーメモリー・・・後方から馬群を縫って鋭く伸び、先頭を捕らえたところを大外からパッシングショットの強襲にあう。
  (3)03年ファインモーション・・・中団から外に持ち出し強襲、差しきる勢いだったがさらに大外でデュランダルの鬼脚が炸裂。
  (4)06年ダンスインザムード・・・中団から伸びてダイワメジャーに並びかけるがそこからの力が残っておらず。
4回とも直線で先頭を捕らえる形までは作れているんですね。ただ、そこから先の策が無い。弓矢の矢のように、ひとたびゴーサインを出してしまったら、微調整やプラスアルファが利かないのです。いや利かないのが普通なのかもしれませんが、(馬券を買っていると特に)負け方が淡白すぎるように見えるのが気になって仕方がない。例えば今年の凱旋門賞の負け方もこんな感じでした。・・・いやたしかに強弓の射手ではあるし、的に当てるのも抜群なのですが。。。


今回でダンスインザムードダイワメジャー相手に3連敗になったわけですが、レース後のコメントを読むに、武豊騎手としては完敗、敗れて仕方なしという風にとっているように見受けられます。確かにあちらの盛運・充実度はかなりなものですが、言うほどに実力差があるとは思えないのですがね。。。


武豊騎手の話でもうひとつ。
先月の凱旋門賞のテレビ中継の際、レース敗戦直後に検量室に戻る武豊騎手の背後から合田直弘氏がインタビューを試みたところ、武騎手から無視されてしばし追いかけっこになった挙句、「残念です」の一言のみで終わってしまったことがありました。
僕は武豊騎手の「沈黙」には寛容な方だと思うので、その時も「合田さん、今はそっとしておいてあげようよ」と思ったりしたのです。一方で「プロアスリートなんだからメディアの受け答えはちゃんとしようよ」という意見の方もいて、まあ当然そう感じる人もいるよなあとは思ってみたりしたのですが、ここに来てこんな裏話が出てきました。


ロンシャンのパドックで : 競馬サロン ◇ ケイバ茶論


ふうむ、インタビューする人も、される人も大変だなあと。
僕が武豊騎手の「沈黙」についてあまり頓着しないのは、普段の受け答えの質・量が他の騎手と比較にならないからです。知名度の違いもあるし、時に「政治的発言」を批判されたりもするけれど、競馬に興味のなさそうなアナウンサーや、芸人としての役回りとインタビュアーの役回りを混同しているタレント相手でも、その場に合った受け答えをしている。
本人がそういうことが苦にならない人なのか、「ノブレスオブリージュ」的にわきまえているのかはわかりませんが、あれだけの質量の露出をこなしているのは凄いなと思うし、競馬の地位向上への貢献ははかり知れないと思うのです。それこそパート1入りがどうとかいうより、ずっとね。
だからこそ、例えばディープインパクトの三冠のかかった菊花賞の前などで「沈黙」してしまったとしても、「さしもの武豊も今回ばかりはそっとしておいて欲しいんだろうな」などと思えるのです。
甘いかな?