無人の境をゆくが如く

今年を締めくくる有馬記念
まずはレースの流れと感想を。
逃げ宣言のアドマイヤメインが予告どおり大逃げを打つものの、ペース自体は平均的なものでした(1000m通過が59秒台)。
むしろ、離れた2番手グループのダイワメジャーらが控えた格好で、1周目から早くも凡戦ムードが漂う展開。距離への不安があるダイワメジャーが前半から抑え気味なのにつきあって、デルタブルースポップロックメイショウサムソンらが淡々と進み、ドリームパスポートは中団待機。これではみんな、勝ちに行くというよりは「あの馬」が不意のアクシデントか何かで自滅してくれるのを期待するか、2着狙いに絞っているといった感じで早くも期待を裏切られた印象でした。
ただ1頭、スウィフトカレント横山典騎手のコンビのみが、後方からの一発に賭けた「勝負」の騎乗をみせてくれましたが、これには外枠発走の不利ゆえという一面もあって期待は薄い。。。
そしてその例の馬であるディープインパクトはというと、これがスタートから終始落ち着いた走りで、鞍上との折り合いも上々。というよりも、過去にないほどの折り合いを見せていました。後方3番手でじっくりと脚をため、残り500mからスパート。反応良く馬群の外を一気に通り過ぎると、直線はもう何のドラマも起きようもない状況に。武豊騎手もムチ一発のみで気合をつけましたがあとは大きなアクションもありませんでした。
「完勝」というかなんというか。。。


今回は、ディープインパクトが勝たない方に賭けていたので、他の13頭の戦い方に大いに失望させられたのですが、ことディープインパクトに関して言えば、この馬のベストパフォーマンスが見られたレースであると思いました。
いつもの様に相手がどう攻めようとと関係ない、という走りでしたので、ベスト「レース」かどうかといえば「否」なのですが、コーナーを6つまわるこのコースで、無理に行きたがるところもなくこれほどじっくりと走るとは予想していませんでしたし、ゴーサインを受けてからの反応も、加速も、コーナーワークも、スピードも、この馬の中でも高いレヴェルでやってみせてくれました。
ある意味完全無欠。。。
引退レースにきて、「完成型」を見せられるとは意外でしたし、一方では、これを海外の大舞台で見せて欲しかったなというのも大いに感じました。


さて、ディープインパクトもこれで引退するわけです。。。
昨年の有馬記念で土がついたがゆえに、今年1年はもっと思い切った競走馬生活を送って欲しかったなというのがイチ競馬ファンとしての感想です。連勝を続けることは大きなプレッシャーになるでしょうが、一応はそこから解き放たれた訳ですし、負けた相手がジャパンカップ2着、ドバイシーマクラシック勝利のハーツクライならば汚点にはならないでしょうから、大きく挑戦しても失うものは小さかったはず、と思っているのですが。
天皇賞(春)宝塚記念の時の走りは良いパフォーマンスだったと思いますが、それはどこか海外の国際GIでその国のチャンピオン相手に見せるべき走りであって、抵抗できる相手もない国内のレースで見せられてしまうのがなんとももったいなかったです。
たった一度おとずれた海外でのレースが、体調不良やなんやらで結果に結び付けられず、再び日本に戻っての引退興行。
ただのファンの立場では何の権利もないのはわかりきっていますが、それでも、この馬にこの1年期待していたことはこんなことではなかったのですよ。引退時期としては適当だとも思いますが、海外でのGIタイトルがひとつもないままというのは残念でならないのです。


無人の境をゆくが如く走り進み、そして走り去ったディープインパクト。無人の野に自分がいないということは当然だけれども、それはまたさびしいものですね。