シーキングザベストとシーキングザダイヤについての血統メモ

ノボトゥルー、ノボジャックスターキングマンシャドウスケイプ。。。森厩舎は毎年フェブラリーステークスには、何頭も出走させてきます。今年は、シーキングザダイヤシーキングザベストトーセンシャナオーの3頭出し。ダート実績の乏しいトーセンシャナオーはともかく、前の2頭は人気・実績ともに上位評価されるのではないでしょうか。名前も似ているので目立っていますしね。
週末までやや間がありますが、今日はこの2頭についての血統メモなどを。



まずはシーキングザベスト。血統表字面でまず目についたのは、Buckpasser 3×5のクロスです。


Buckpasser自身は1963年、後の大種牡馬Northern Dancerが競走馬デビューした年の生まれです。その血統を概説すると、3代前に名を連ねている種牡馬が、Pharamond、Bull Dog、Man o'War、Blue Larkspurの4頭で、3代母が偉大なる繁殖牝馬、La Troienne。個人的には、旧来のアメリカのサラブレッドの血統のひとつの頂点かな、と思っています。
ここで「旧来の」としたのは、2度の世界大戦を経て世界のサラブレッド勢力図の中心がイギリスからアメリカに移る前、という意味で、厳密に”○○年を境に”ということは決めていませんが、Mahmoudが売られた1940年、当歳のPrincequilloが戦火を避けて大西洋を渡った同じ1940年、Nasrullahが売られた1950年というあたりを象徴的なものとしてイメージしています。


種牡馬Buckpasserは、「名種牡馬の父」としてよりも「名繁殖牝馬の父」として後世に大きな影響を与えています。僕はこれを、それまでのアメリカ競馬(北米競馬とした方が良いかな?)で選定・淘汰されてきた血統をまとめあげたのがBuckpasserで、これを踏み台にして新時代のスピード血統の種牡馬が一流馬を輩出した、という風にとららえています。”新時代のスピード血統とBuckpasser肌馬との組み合わせ”ですぐに思いつくものを挙げれば、Northern Dancerとの間にEl Gran SenorAlydarとの間にEasy Goer、日本でなじみなところではNijinskyとの間にマルゼンスキー。そしてMr.Prospectorとの間にWoodman、Miswaki、Seeking the Gold。競走成績も種牡馬成績も一流の馬たちが揃っています。


ところが、このBuckpasserは日本競馬とは相性があまりよくないようなのです。マルゼンスキーの功績を考えるとBuckpasserがダメとは全く思いませんが、どうもこれを強調しすぎると結果が良い方に向かわない様子。
Buckpasserのクロスを持ち、日本で活躍した馬を例に挙げると、ブレイクタイム、ミッドタウン、ステファニーチャン、ディーエスサンダーなどなど。高い潜在能力を感じさせるのに、GIとなるとあと一歩及ばない、、、というか、おそらくかなりな器のはずなのに国内にその馬に向いた条件のGIレースがない、、、といった馬たちです。(ちなみにちなみに、、、今年の3歳のローレルゲレイロBuckpasserクロスを持っていますね)


シーキングザベストは近走の成績も安定している上、フェブラリーステークスと同じコースのGIII武蔵野ステークスを勝っていますが、ベストの条件は、ダート1200m戦、広々としたコース、ややハイペースで先行できるメンバー構成といったところでしょう。GIを勝つならフェブラリーステークスが一番可能性がありそうな気もしますが、血統や展開予想から考えると、あっても2,3着までかなという風に考えています。
なんとなくですが、同厩のトーセンシャナオーが邪魔になりそうな気がしてならないのですが。。。



もう一方のシーキングザダイヤ。名前が似ているのは、もちろんSeeking the Goldの血を受け継いでいるからです(シーキングザベストの父、シーキングザダイヤの母の父)。


先ほど名前を挙げたとおり、Seeking the GoldBuckpasserを母の父に持つ名馬の1頭です。
Mr.ProspectorBuckpasserを組み合わせると、こちらも先に名前を挙げたPharamond、Bull Dog、Man o'War、Blue Larkspurの4頭の名種牡馬がすべてクロスすることになり、Buckpasserの能力を再現するようなかたちになります。そして、母の母方にNasrullahとHyperionが入っているWoodmanや、NasrullahPrincequilloが入っているMiswakiと比べると、祖母もアメリカ在来血統で固められたSeeking the GoldBuckpasserの再現度が高いと言えます。
逆に言ってしまうと、NasrullahやHyperionのような日本競馬に向いた血が少ない分、Seeking the Goldの子孫たちは、日本においては”Buckpasserの呪縛”から逃れにくいとも。。。


シーキングザダイヤ自身は、Seeking the GoldおよびBuckpasserが特に強調された配合とは言い難いですが、Bold Rulerであったり、Native Dancerであったりと、Buckpasserと同様に旧来のアメリカ血統を活かした馬たちとの共闘というかたちで、それに似たような配合になっていると思われます。・・・つまり、新旧の優秀なアメリカ血統を結集させた、北米競馬の申し子(とまで言ったら言いすぎか)。
トップスピードを他より長く維持してスピードで圧倒するスタイルで、中長距離で脚を溜めて伸びる馬とは対極に位置しています。ちなみに溜めて伸びるの代表ともいえるHyperionの血は6代前に1つだけ。ディープインパクトには6,7×6,7,7の5つ、フサイチホウオーには5,7,7,7,8,8,8,9×6,7,7,8,8の13ヶもあるという例を挙げればイメージがしやすいでしょうか。


競馬は馬が群れで走る習性を利用しているため、単純なタイムトライアルのようにならないのはどうにも仕方のないことですが、日本の競馬がもう少しハナから飛ばすアメリカ寄りのスタイルだったら、シーキングザダイヤもとっくにGIウィナーになっていたのではないかと思います。
こちらもシーキングザベスト同様、もし日本でGIを勝つならばフェブラリーステークスなような気がしますが、終いのために余力を残しつつ競馬をするタイプではないだけに、特にマイルより長い距離になるとゴール前は詰めが甘くなりがち。そうすると、武豊騎手とのコンビは相性が悪い部類に入るのではないかと勘ぐっているのですが、、、どうでしょうか。能力は出走予定メンバー中最上位クラスの馬と思いますが、またもや2着という可能性が高い気がします。


はてさてどうなりますか。