アルカセット (ジャパンカップ)

ジャパンカップは、天皇賞(秋)とはうってかわってハイペースの展開になりました。勝ち時計は1989年の同レースで記録されたホーリックスの2分22秒2をコンマ1秒上回る日本レコード。勝ったのはこの馬。


アルカセット Alkaased (Nureyevちゃん)
牡5 2000/2/19生 父Kingmambo 母Chesa Plana
牝系 F.No.〔10-c〕 アメリカ産・イギリス調教馬


ちょうど競馬を本格的に見始めたのがオグリキャップ(vsタマモクロス)の時代でした。どちらかというとアンチ・オグリキャップな方でしたが(タマモクロスイナリワンが好きでした)、ホーリックスオグリキャップが叩き合ったあのレースの2分22秒2の記録はずっと破られないものと勝手に思っていました。もっとも、東京競馬場が改修される前の記録なのでコースレコードが書き換えられたわけではないのですが、あのレースの「記録」が「記憶」にされてしまうことを思うと、何だか残念な感じがしました。安田記念の1分32秒4も不滅の大記録だと思っていましたが、馬場改修後は1分32秒台は当たり前のように出ていますね。
今年のレースで、サンライズペガサス(6着)に騎乗していた蛯名騎手(負傷の後藤騎手の代役)が、東スポの自身のコラムでこう書いています。



2分22秒1の日本レコードはハイペースだった(5ハロン58秒3)こともあるけど、それよりもあの固い馬場が要因だろうね。芝の状態は良くないのに時計が出る。馬のためにはいいことじゃないんだけど・・・。


能力の高い馬ほど大怪我をしやすいのは、何も日本に限ったことではないとは思いますが、何百メートルにつきコンマ数秒を縮めるために馬の脚元にリスクを課すのはばかばかしいと思います。何もエプソムやロンシャンの馬場に合わせろというわけでなく、もう少しだけクッションの効いた馬場にできないものでしょうか。


さて、今年の勝ち馬のアルカセットですが、何より鞍上・デットーリ騎手の巧さが印象に残りました。この馬はいつもそうらしいのですが、今回もやや遅れ気味にゲートを出たものの、デットーリ騎手はあわてずすぐに内ラチ沿いに馬のポジションを移し、道中は距離のロスなく進みました。この時の余力がものを行った格好で、最終コーナーでもインコースのまま周り、直線で馬群の真ん中から抜け出てハーツクライの猛追を凌ぎきりました。乱ペースともいえそうなハイペースでしたが、あたかも最初からそれを予想していたかのように、決勝線できっちり数センチ前に出たというような鞍上の超絶的な騎乗でした。
例えば武豊騎手などは、ストロークのロス(窮屈なところを通るのに小足を使う)より内外のコースどりの距離のロスの方が小さいとして、勝つために外を回る騎乗が多いように思います。馬の能力を信じればこそ、不意のアクシデントはできるだけ避けたい、といった騎乗法でしょうか。一方今回デットーリ騎手は、進路を失うリスクを負いつつも出来るだけ近道を通ってくる方法を選択してきました。思い出すとイーグルカフェジャパンカップダートのときなどもそうでした。よくそこから抜け出てこれたな、というような。。。この騎乗スタイルでも毎年安定した好成績を挙げるというのは驚きだなと思う一方で、こうしなくては世界の頂点のレースを勝てないのかもしれないなと感じました。
アルカセット自身は、5歳の今年になってようやく初重賞を勝つなど、やや遅咲きながら徐々に本格化してきたようですね。次走はおそらく香港ではなかろうかと思いますが、ファルブラヴのように、ジャパンカップをバネにしてトップホースへ飛躍することを期待します。



(追記)
ゆっくりゆっくり、暇をみては書き足していたら、事態が変わってしまいました。日本で種牡馬入りとのことですね。この馬は元の馬主がドバイのハムダン殿下でしたから、ダーレージャパンで種牡馬入りということは、買い戻された、という言い方でよいのかしらん?


期待していたバゴはレース中に負傷し、ウィジャボードはやや不利を受けて、残念な結果になりました。ベタートークナウはダメな時はあんなのものでしょう。
一方日本勢は、中長距離路線のトップの馬のレヴェルの落ち込みが目立つように感じられました。日本勢で最も格上とみられたゼンノロブロイを抑えての2着に入ったハーツクライは上手く能力が発揮できればあれぐらいは走ってくる馬ですが、先代の頂点の馬、シンボリクリスエステイエムオペラオーが相手だったら、それでも先着できなかったのではないかなと思います。「チョイ負け」が続くゼンノロブロイには、「横綱」として物足りないものを強く感じました。去年の秋3冠がフロックだったとは言いませんが、タップダンスシチー共々、次の馬に地位を譲り渡す時期が来ているのかもしれません。
ジャングルポケットがテイエムオペラオーに勝って世代交代を宣言した2001年のような要素は、「あの馬」の不参戦によりなくなってしまいましたが、それでも名手の妙技を見ることができたという意味で、今年のジャパンカップは印象深いものになりました。