皐月賞と故障馬

カミノタサハラ号が故障

 2013年報知杯弥生賞(GII)に優勝したカミノタサハラ号(牡3歳 美浦・国枝 栄厩舎)は、左前浅屈腱炎を発症していることが判明しましたのでお知らせいたします。
 なお、予後については経過観察中です。

http://www.jra.go.jp/news/201304/041703.html

 

皐月賞4着のカミノタサハラが屈腱炎発症、あと12着のフェイムゲームも骨折で戦線離脱という発表がありました。

皐月賞コースレコード更新ということで、やはりこの故障を「レコードが出るような『高速馬場』のせい」とする向きも出てくるんだろうなぁ、と思っております。

この話題はG1の出走馬が故障した後なんかに何度も繰り返し出てきていますが、「高速馬場」だから故障したという因果関係は、いまだにはっきりとわからないです。

芝が生えそろって速くない馬場、例えば昨年、中京競馬場が新装なった開催のもの凄く時計がかかった芝良馬場でも、開催前半から故障して予後不良となった馬は数頭いました(ゼロチョウサン、もっと出世すると思ってましたが残念)。

もちろん、荒れ馬場でもダートでもたくさん故障馬は出ています。

 

僕自身、「『高速馬場』は脚への負担が大きいから悪い」みたいな考えを持っていた時期もありましたが、長いこと競馬を見てるうちにどうも筋が違うように思えてきました。芝の長さや乾き具合、それに地面の状態なんかで、時計の出やすさが変わり、早くゴールする為に求められる資質が変わってきますが、故障のしやすさはそんなに変わってないんじゃなかろうかと。

現場の人間じゃないのでわからないことだらけではありますが、「『高速馬場』だから故障した」というものは、「なんか、ちがう」と。

 

それにそもそも先週の日曜は『高速馬場』だったのかというのも疑問。

2回・3回中山は2月後半からの連続で先週が最終週でしたが、そんなに特殊な馬場だったかなあと。

 

比べやすそうなところで、古馬1000万条件の芝レースを並べてみます。

芝1200mでは、

  • 2/23(2回1日目)12R(メイショウヒデタダ) 良1分8秒7(前33.5-後35.2)Aコース1週目
  • 3/9(2回5日目)房総特別(サイレントソニック) 良1分8秒2(前33.2-後35.0) Aコース3週目
  • 3/31(3回4日目)12R(ツインクルスター) 良1分8秒2(前33.8-後34.4) Bコース1週目
  • 4/14(3回8日目)袖ヶ浦特別(ミヤジエムジェイ) 良1分8秒6(前34.8-後33.8) Bコース3週目

この2開催、降雨がぶつかった週以外はまずまず時計の出るコンディションでしたが、そんなに飛びぬけて速い勝ち時計はありません。サイレントソニックはこのあと準オープンでも僅差の勝負になっているぐらいなので、ここではなかなかのタイム。

ミヤジエムジェイの勝った袖ヶ浦特別の上がりが速いのは、前半強い向かい風、直線強い追い風だったことが影響してるのでしょう。

 

芝2000mは1000万条件だとレース数が少ないので付け足しますと、

  • 3/3(2回4日目)弥生賞G2(カミノタサハラ) 良2分1秒0(前61.6-後59.4) Aコース2週目、週中の雨の影響あり(当日ダートは稍重)
  • 3/17(2回8日目)館山特別1000万(エクセリオン) 良2分1秒6(前62.1-後59.5) Aコース4週目、同日古馬500万条件の方が速い(2分1秒2)
  • 3/24(3回2日目)常総ステークス1600万(ヴェルデグリーン) 良2分2秒0(前63.2-後58.8) Aコース5週目(最終週)、スローペース
  • 4/14(3回8日目)鹿野山特別1000万(オメガブレイン) 良1分59秒7(前60.5-後59.2) Bコース2週目
  • 4/14(3回8日目)皐月賞G1(ロゴタイプ) 良1分58秒0(前58.0-後60.0) Bコース2週目

こんな感じ。

オメガブレインがハナ切って上がりもまとめるという好内容の結果を出してしまったので、逆に館山特別・常総ステークスとの比較が難しくなってしまいました。

確かに先週はまずまず時計の出やすいコンディションでしたが、人為的にレコードを塗り替えさせるような異常な馬場が作られたなら、おそらく鹿野山特別は1分59秒を切るぐらいの決着になっていたのではないかと。(秋の中山開催前半だと58秒台がちょくちょく出るので)

で、鹿野山特別と皐月賞を並べてみると、当日の馬場が異常というよりは、皐月賞の勝ち時計が特別、もっと言えば、コパノリチャードが引っ張った流れについていって凌ぎ切った皐月賞上位組が特別なのでしょう。

ちなみに館山特別の日はロゴタイプが勝ったスプリングステークスの日でもありますが、スプリングステークスの勝ち時計は1分47秒8、1000m通過は60秒1、上がり800mが47秒7です。

 

緻密な推論になってないのは認めますが、カミノタサハラやフェイムゲームの故障は、馬場がどうこうというよりは、皐月賞の厳しいレース内容に起因するものと見るべきじゃないかと。身についたアスリート能力以上の、伸びしろ分まで引き出されるような競走の反動で、まだ成長途上の体が悲鳴を上げてしまった、という感じ。

アントニオ猪木の風車理論風にいえば、向かってくる風が強ければ強いほど自分も強く回転する。でも、風車小屋がまだ未完成だった、とでも。(違うか)

 

中山よりは東京コース向きに見えたカミノタサハラの故障は大変残念ではありますが、この厳しさもクラシックの一面だと思っています。

あと、オメガブレインはなかなか優秀だと思うので昇級しても狙います。(ただし次走じゃなくて、2ヶ月ぐらい間隔開けた後とか楽に先行できそうな時に)